NISAの恒久化を見送り理由が富裕層への優遇ってのはどう考えてもおかしくない?

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政府は、2019年10月に期限付きで導入された少額投資非課税制度(NISA)について、恒久化を見送る方針を固めたというニュースが流れました。

恒久化は金融庁や証券業界が求めていたが、現行制度は富裕層への優遇だとの指摘もあり、認めるのは難しいと判断した。
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NISAの年間たった120万の投資枠で富裕層への優遇???
どう聞いても違和感しか感じませんでした。

NISAは富裕層向けの優遇なのか?

そもそも富裕層って一般的に言って金融資産1億円以上の層の事です。

これだけの資産を投資に回したら年間120万円の枠なんてすぐに使い切ってしまいます。

もしかしたら年間120万円分の余剰資金があるなら充分富裕層でしょって思う人もいるかも知れませんが、それはちょっと勘違いです。

そもそも120万円の枠いっぱいに使わなきゃいけないルールもないから年間10万円だけ投資する選択肢もあります。
さらに10万円の投資額で何回も取引して120万の枠いっぱいまで使い切る方法もあるのです。

少ない資金でも何度か回転させればNISAの限度額である年間120万円までの取引の利益が無料になるのだから、この制度はむしろ低所得者の投資家にとってありがたい制度なのです。

世界の証券税率

それでは次は日本の証券の税率は高いのかを知らべてみました。
こちらは財務省のデータからですが、先進国では全体的に日本よりも収入が低い層には税制はゆるいようです。

主要国の株式譲渡益課税の概要

アメリカは配当も含めて年間445万円の利益までは無税!
イギリスも171万円までは課税されません。

フランスは総合課税も選択できるので所得が低いと無税か税率が低くなります。

ドイツだけは日本よりも厳しめですが、他の所得を合算したときに適用される税率が25%以下となる場合には、申告により総合課税の適用が可能で配当の合計801ユーロ(10万円)までは非課税。

申告しなかった場合でも所得税率が30%以下の個人は、還付請求によって差額の返還をしてもらえるのでちゃんと低所得者向けの救済はあるようです。

そう考えるとキャピタルゲインに関しては年収に関わらず問答無用で20%の課税をする日本の税制は中低所得者にとって相当厳しいと言わざるを得ません。

学生や主婦、年収200万円のフリーターでも年収1億円の人と税率がまったく一緒!

現行の証券税率で得をするのは年収695万円以上

NISAを使わずに普通に株式を取引して利益が出た場合の税率は20%です。
これは譲渡も配当も一緒です。

配当の場合は、課税所得が695万円以下なら総合課税を選択すれば配当所得の10%(住民税については配当所得の2.8%)が配当控除として戻ってきます。

この部分だけは中低所得者に配慮されています。

上場株式等の譲渡所得等は「申告分離課税」です。
年収に関わらず株式渡益の合計に対し20%(所得税15%、住民税5%)の税率が適用されます。

所得税に関しては年収695万円を超えると20%以上になりますが、それ以下は税率20%以下です。

日本の所得税率

つまり、株の税率が20%に固定されていてメリットがあるのは所得金額695万円を超えの中高所得者層という事になります。

年収695万円以下の中低所得層にとっては20%の税率は所得税以上にきつい負担になります。
逆にそれ以上の年収の人にとっては20%の税負担は所得税以下なので軽い負担となります。

したがって、中低所得層にとっては株取引で収入を増やすのも税負担が重く一苦労ですが、高所得層にとっては税負担が軽いのでさらに収入を増やすことは比較的容易な構造なのが分かります。 

投資家=お金持ちなのか?

以下は平成31年の個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書のデータです。

有価証券保有額-年収別

個人投資家全体の過半数である50.7%が300万円未満の保有額となっています。

さすがに年収1.000万円以上の層は億超えも含まれるから1000万円~3000万円が最多になりますが、年収300万円未満から1000万円以下までは、この保有額が最も多くなっています。

大多数の日本の投資家は300万円以下の資金でチマチマ株取引をしているのが分かります。
これのどこを見て富裕層優遇と言えるのか甚だ疑問です。

恒久NISAはむしろ中低所得者限定にするべき

NISAが富裕層への優遇という批判があるなら課税所得695万円以下の中低所得者層限定で恒久化すれば良いだけの話じゃないのでしょうか?

もし株の取引を含めた収入が一定の金額を超えたら翌年からNISAの枠を外して納税してもらうって事にでもして。

あまりにも日本は株で稼ぐ事への偏見がありすぎだと感じてましたが、政府がこんな姿勢じゃ株やらない大部分の日本人が投資なんてやろうと思うはずがないでしょう。

日本政府が多くの国民に投資をして欲しいのならアメリカのような年収に応じた段階的な税率の導入と中低所得者層向けNISAの恒久化が一番効果的ではないでしょうか?

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